作ったイラストってどこまでの使用許可を出すものなの?
まずは著作権について知っていこう!
著作権とは
著作権とは制作者に法律で認められている著作物を保護する権利のことです。著作権法と呼ばれる法律で保護されています。
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と著作権法で定義されています。ここでは自分の考えや気持ちを作品として表現したものを「著作物」として扱い、それを創作した人を「著作者」と呼びます。
著作権を持つ著作者には(狭義の)著作権・著作者人格権・著作隣接権の3つの権利に分けられています。
- (狭義の)著作権… 「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利。
- 著作者人格権……… 著作物の創作者が作品に対してもつ名誉権等の人格的利益を保護する権利。
- 著作隣接権………… 著作物の創作者ではないがその流布に貢献のある者に対して契約に基づかずに与えられる権利
知らないうちに権利を手放してししまわないようにしっかり覚えておかないと!
自分が作ったものだけじゃなくフリー素材を買ったときも注意しようね!
立場によって適応される権利が変わるし急にどの立場になることもあるよ。
(狭義の)著作権とは
著作者とは著作物を保護する権利のことです。この中に(狭義の)著作権とよばれる著作者に与えられている権利が10個あります。
著作物を何らかの形で利用した人から対価を得る権利であるため、著作財産権とも称されます。
イラストには関係ないものもあるけどいざというときのために覚えておこう
(狭義の)著作権10個の権利
1.複製権(21条)
著作者が印刷や写真、複写、録音などの方法で著作物を有形的に再製できる権利です。
2.上演権・演奏権(22条)
著作者が自己の著作物を公衆に見せたり聴かせたりすることができる権利です。
3.上映権(22条の2)
著作者が自己の著作物を公衆に向けて上映できる権利です。
4.公衆送信権等(23条)
著作者が自己の著作物を自動公衆送信したり、放送したりすることができる権利です。
5.口述権(24条)
著作者が言語の著作物を公に口述できる権利です。
6.展示権(25条)
著作者が美術の著作物や発行されていない写真の著作物を公に展示することができる権利です。
7.頒布権(26条)
著作者が映画の著作物をその複製物により頒布することができる権利です。
8.譲渡権(26条の2)
著作者が映画以外の著作物の原作品や複製物を公衆に譲渡することができる権利です。
9.貸与権(26条の3)
著作者が映画以外の著作物の複製物を公衆に貸し出すことができる権利です。
10.翻訳権・翻案権(27条)
著作者が自己の著作物を翻訳、編曲したり、その他翻案したりすることができる権利です。
自分の著作物をまとめて公表するときに行使するといい権利だね
著作者人格権とは
著作者人格権とは、著作者が有する人格的・精神的利益を保護するための権利のことを指します。
この中には、公表権(こうひょうけん)、 氏名表示権(しめいひょうじけん)、同一性保持権(どういつせいほじけん)、名誉声望保持権(めいよせいぼうほじけん)という4つの権利があります。
著作者人格権4つの権利
1.公表権
著作物を公表するかどうか、公表する場合の方法や条件を決定できる権利です。自身の作品を公衆に提供したり提示したりする際に、公表権を行使できます。 原著作物を基にした二次的な著作物についても同様に公表権を行使できます。
公表の仕方を自分で決めれる権利だよ
2.氏名表示権
著作物の原作品または著作物の公衆への提供・提示に際し、著作者名を表示するかしないか、表示するとしてどのような著作者名を表示するか(実名かペンネームで表示するか)を決定できる権利です。
著作物に表示されている著作者名を勝手に変えたり、表示を削除したりすることは、氏名表示権侵害になります。
「氏名を表示しないで」という指示は「氏名表示権の侵害です」とはっきり言おう!
3.同一性保持権
著作者が著作物に対して有する思い入れやこだわりを守るために設けられています。著作物の題号や内容を勝手に改変されない権利です。
著作者が著作物が勝手に改変されたことにより受ける精神的苦痛の救済を目的としており、主観的な意図に反する形で行われた改変を対象にしています。
誤字や脱字を修正する程度の改変は、同一性保持権にはあたらないよ
4.名誉声望保持権
著作者の名誉や声望を害する方法での著作物の利用を禁止できる権利です。「名誉・声望」とは、主観的な名誉感情ではなく、客観的な名誉・声望(社会的評価)を指します。
例えば芸術性の高い音楽を性風俗店のBGMとして使用する行為は、名誉声望保持権の侵害にあたるなど、公表したものが想定外にイメージを低下させる目的で使用されていると判断できれば使用の中止を求めたりすることができるという権利です。
個別で許可を得たものの中止を依頼する場合は別途違約金が発生することがあるから気を付けて!
著作隣接権とは
著作隣接権は、著作物の創作者ではないものの、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、および有線放送事業者に認められた権利です。
著作物はときに個人を超えてたくさんの人を動かすことがあるからその著作物に関係する人の権利だね。
急に使うときが来るかもしれない
おもな権利と内容
実演家の権利
- 実演家人格権: 自分の実演について氏名若しくは芸名等を表示するか、又は表示しないかを決定する権利
- 同一性保持権: 自分の実演について実演家の名誉や声望を害する改変をされない権利
レコード製作者の権利
- 複製権: 製作したレコードを複製する権利
- 送信可能化権: 製作したレコードを送信可能化する(端末からのアクセスに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く)権利
放送事業者及び有線放送事業者の権利
- 複製権: 放送又は有線放送を、録音し、録画し、写真的方法により複製する権利
- 再放送権/有線放送権/放送権/再有線放送権: 放送を受信して、これを再放送・有線放送する権利、又は有線放送を受信して、これを放送・再有線放送する権利
著作物が広く評価されると著作物の関係者の権利も覚えておく必要が出てくるよ。
著作権の注意点
共同著作物(法2条1項12号)
共同著作物とは「二人以上の者が共同して創作した著作物でかつ、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」と定義されています。
共同著作物に該当する場合は公表や使用の際に制作にかかわった権利者全員に許可を取る必要があります。その手間を省くために企業では会社の指示下で制作を指示したものは会社が著作権をもつことを望むことが多いです。
「著作者」と「著作権者」の違い
「著作者」は制作した段階でこんなたくさんの権利を持つなんて!
ただ注意してほしいのがこの権利、譲渡もできるんだよ。
著作物を制作した人のことは「著作者」と呼ばれ、通常制作した段階で著作者はこれらの権利を持っています。
しかし著作者は著作権のその一部、またはすべてを他者に譲渡(売却)をしたり、相続の対象としたりすることも可能です。
売却や譲渡をしてこの狭義の著作権を持っている人を「著作権者」といいます。
例外の取り決めなく完全に譲渡した場合は著作者に譲渡した分の権利はなくなってしまいます。
他人の著作物を使う場合は「著作者」「著作権者」が別であることも多いので気を付けるようにしましょう。
また職務著作(著作権法第15条)に該当すれば著作権は会社に帰属します。雇用関係のない企業で制作した著作物は労務提供に対する対価の支払いがあれば、「法人等の業務に従事する者」に該当する傾向があります。
現在グレーゾーンであり、別途契約によってこの著作権を会社に譲渡していることも多いです。
それ相応の対価をもらっていればアリだけど、必ずしもすべて納得して著作権を手放している人ばかりではないよね。
「著作権は●●社にすべて帰属します」という取り決めをしている契約書もあるからしっかり確認!
著作権の期限
著作権は基本的に著作者が生きている間は保証されますが、一部例外と法で定められた期限があります。
実名の著作物
実名で公表された著作物の保護期間は、著作者の死後70年を経過するまでの間です(著作権法51条2項)。
無名・変名の著作物
著作者が無名や変名(ペンネームなど)で公表した著作物の保護期間は、著作物の公表後70年を経過するまでの間です(著作権法52条1項)。
共同著作物
共同著作者のうち最後に死亡した著作者の死亡時点から70年とされています(著作権法51条2項)
70年だと生きている間は大丈夫だけど、実名とペンネームでも違うから著作権を相続する人が居る場合は注意が必要だよ。
海外の著作物
たとえば日本人が制作しインターネットで公表したものを外国人が海外で使用する際にはどのように著作権が適応されるの?
基本的に著作権は国境を越えて適用されるとされています。
日本が「ベルヌ条約」「万国著作権条約」などの著作権条約に加入しているからです。日本人制作した著作物が外国で使用される場合にも、日本の法律に基づいて著作権の保護が適用されます。
ただし著しい侵害を見つけた場合は個別に裁判が必要だけどね。
職務著作を知ろう
職務著作は雇用契約関係のある社員が会社の指示のもと制作した著作物のことです。著作権法15条1項で「法で規定された一定の要件を充たすことで法人その他使用者(法人等)が著作物の著作者になること」と定義されています。
音楽や美術、小説などに加えてソフトウェアやゲームソフト、スマホアプリなども「プログラムの著作物(法10条1項9号)」として保護の対象になっています。その中で企業名で販売・提供されている著作物の著作権は会社内のプログラム開発者や冊子の制作者に属すると考えられています。
共同著作の場合は共同著作者全員の合意が必要になるため、多大な手間と時間がかかり、それによって業務が滞ってしまう事態を避けるため、法で一定の成立要件のもとに会社自身を著作者とすることができることを定めています。
使うたびにいちいち許可を取るのは確かに面倒かもしれない
企業側の立場だったらトラブルになりそうな著作物にお金をかけるのは怖いよね
職務著作の成立には以下5つの要件を充たす必要があると定めています。
- 法人その他使用者(法人等)の発意に基づき
- その法人等の業務に従事する者が
- 職務上作成する著作物で、
- その法人等が自己の著作の名義のもとに公表し、
- その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない
職務著作の5つの成立要件(法15条1項)
1.法人その他使用者(法人等)の発意に基づき
法人その他使用者(法人等)とは指揮監督権限を持つ者のこと。法人個人を問わず使うことを想定して制作を指示する人が居れば職務著作になり得ます。
2.その法人等の業務に従事する者が
会社と雇用関係にあり、上司など指揮監督権を持つ使用者の命を受ける従業員のことです。ここでは正社員・アルバイト・パートタイマー・契約社員・派遣社員などはこれに該当します。
例外として外注先は委任や請負などの契約形態を採ることが多く、法人等とは指揮監督の関係にないため、原則として業務従事者となりません。
グレーゾーンとされる所以だね
3.職務上作成する著作物で、
その業務に法人等の指揮監督関係が認められれば職務上作成する著作物に該当します。
業務命令下で作成を指示されたものを自宅で制作した場合は該当するけど、休日に自分で作成したものは該当しません。ただし、命令を受けなくてもその制作物が職務の遂行上予期されていたと判断されれば職務上の作成と認められるとされています。
もっと細かくトラブルが起きた場合は個別に裁判しないといけない事例だね
4.その法人等が自己の著作の名義のもとに公表し、
上記1~3つの要件を充たしていても、その著作物が作成した業務従事者の名前で公表されれば職務著作とは認められません。
会社名で公表されれば会社の著作物、従業員の名前で公表されれば従業員の著作物です。これには公表予定の著作物も含まれます。
しかしプログラムの著作物については社内で作成したプログラムを用いて何らかのシステムソフトを制作し公表しても、用いたプログラム自体は公表しないことが多いため公表要件は不要とされています。
個人の名前で公表できれば会社というプラットフォームを公表方法として使用したという考え方もできるね。
5.その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない
雇用契約や社内の勤務規則等に「作成した著作物の著作権は作成者に留保する」と定められていれば法の適用を受けず、職務著作とはなりません。逆に言えば著作権帰属の定めがある場合は会社との取り決めのため覆すのは困難です。
著作物に該当しそうなものを担当する職務をする場合は契約書などの定めは確認しておくのがいいでしょう。
著作権を譲渡するのは制作物が世に広まるという視点で見れば必ずしも悪いことではないよ!
ただ会社との間で著作者がどこまで使用可能か、報酬は十分か話し合える機会を持てるのが理想だね。
著作権マークを知ろう
こんな記号を見たことない?
あるある!
イラストとかの下に書いているよね
これはコピーライトと言って著作権を示すマークなんだ。
著作権マークは制作物の著作者が「いつから誰にあるのか」を示すものです。コピーライト(Copyright)と呼ばれます。
アメリカの著作権法や国際的には万国著作権条約に規定されています。コピーライトの表記を行わない場合でも著作者の死後70年間著作権は保護されることになっていますが、特に著作者と著作権者が違うケースなどもあり、誰に許諾をとるかを分かりやすく明記するという意味でコピーライトを記す場合が多いです。
- ©または(C)…………… 「Copyright」の略字
- 2024 ……………… 著作物の発行年(更新した年も一緒に記載する場合も)
- minorica ……………… 制作者名(英語表記が義務付けられています)
- All rights reserved…… 「無断転載を禁じます」という意味。過去の条約の名残で現在では省略可。
訳すと「Minoricaさんが2024年に著作権を保持したので無断転載はご遠慮ください」ってことね
著作権マークを記載することによって著作権の所有者と無断転載を防ぐ機能があり、イラストだけではなく、HPやソフトなど重要な商業著作物にはこのようなコピーライトを入れることが推奨されています。
すべての著作物につけていいんだ!
著作権では保護できないもの
中には著作権では保護できないものもあるよ
覚えておいてね
逆に言えば創作の際に使ってもいいってことだね。
ううん…
使っていいかどうかは個別に判断が必要だけどね…
憲法や法律
憲法や法律の文言は著作権で保護されません。これは、法的文書が公共の利益に関わるため、誰でも自由にアクセスできる必要があるからです。
著作権が消滅したもの
著作者の死後70年以上が経過した著作物は著作権が消滅します。この期間が経過したものは著作権の保護対象外となります。
アイディア
アイディア自体は著作権で保護されません。例えば料理のレシピや設定などはアイディアに過ぎますが、具体的に表現された文章や絵は著作権の対象となります。
ごくありふれた表現で創作性がないもの
単なる事実の伝達や簡単な表現は著作権の保護対象外です。ただし、報道などは創作性が認められる場合があります。
トレースや模写
原作品をそのままトレースしたり模写したものは著作権の保護対象外です。
使っていいと思ったものがこれに該当しなかったケースもあるから使う際にはしっかり気を付けてね
これで著作権はバッチリ!安心して創作できそう!
このほかにも権利なら「肖像権」「パブリシティ権」「商標権」に、広告なら「不当景品類及び不当表示防止法(景表法)」おける健康増進法第65条第1項における「誇大広告の禁止」などクリエイターに関わる法律はたくさんあるけどね…
ちょっと頭が痛くなりそう……
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